地殻の隆起
 Upheaval of the Earth Crust

本の紹介

星野通平著
 
地殻の隆起
山はなぜ高いか
イー・ジー・サービス,188p. 2000円

柴 正博
2019年7月


 今年すでに96歳なられた星野先生の新しい本が出版されました。地殻の隆起という地球の歴史の本質をテーマに、山がなぜ高いかを地球の歴史と地質構造からコンパクトにまとめられています。著者の「まえがき」にもありますが、生涯最後の仕事として地殻の隆起問題を取り上げて執筆を始めた直後から、2度にわたる長期の入院とその後のリハビリ生活をつづけ、不完全な体調の中でとりまとめられた本とのことですが、これまでの先生の地殻の隆起というテーマのまとめとして十分に読み応えのあるものになっています。

 第T部の「地殻隆起の駆動力と猟奇の形態」では、地殻の隆起を駆動したエネルギーと、地球の歴史の中での海水準上昇と隆起の変遷がまとめられています。第U部の「日本列島各地の地殻隆起」では、西南日本弧の領家帯の隆起(領家花崗岩質岩類と準平原形成)、日高山脈の形成、西南日本の南北方向の再生山脈、東北日本グリーンタフ域の隆起運動、フォッサマグナ地域の隆起が取り上げられていて、これまでの本ではあまり具体的に議論されていなかった日本列島や北海道の地質構造とその隆起運動について詳細に述べられています。第V部は「隆起の駆動と隆起形態についての要約」として、これまでの議論の要約が述べられています。

 本書の課題は、地殻の隆起と非隆起と、歴史的にその場所が逆転したことであると著者は述べている。すなわち、隆起に対する沈降はなく、あるのは非隆起であり、その隆起の運動は歴史的に場所を逆転させてきた。かつての海は陸になり、陸は海となった。その隆起の駆動力は、中生代以降は上部マントルからの高温玄武岩の上昇とそれによる花崗岩地殻への底置による改変花崗岩マグマおよび酸性火山岩の活動による地殻隆起への転換であると述べていて、そのため本書では西南日本弧の領家帯の隆起や西南日本の南北方向の再生山脈、フォッサマグナ地域の傾動隆起がとくに取り上げられている。
                                     


2019/7/29
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