恐竜の絶滅

 バヤンザクの南にあるこの高さ50メートルの崖には、ほぼ水平に砂層が重なっている。崖の上部には2〜3枚の薄い石灰質な層や礫岩層があり、中部には層に分かれていない厚い1枚の砂層がある。そして崖の下部には、でたらめにセメントで固められたようなごつごつした砂岩層があり、その下には拳ほどの大きさの硬い砂のかたまり(石灰質ノジュール)をふくむ砂層がある。

 下部のごつごつした砂岩層からはたまごの巣の化石が発見されているし、その下の砂層からはプロトケラトプスやピナコサウルスなどの恐竜化石が発見されている。また、この砂層にふくまれる石灰質ノジュールからはしばしば小型の原始哺乳類の化石が発見されるという。我々のキャンプ地は、ちょうどその下部の砂層の上だった。

 これらの砂層は一般にバヤンザク層と呼ばれ、バインシレ層の上位におかれるが、地質時代については白亜紀後期は確かなものの、研究者によっていろいろと意見がちがっている。バヤンザク層など白亜紀後期の地層はほとんどが砂層からなるため、ところどころに離れて露出する地層同士を、白亜紀前期の地層のように白色凝灰岩や緑色粘土岩などの地層の岩質によって区別して、上下の関係を決めることができない。

 そのため、白亜紀後期の地層は、地層から発見される恐竜化石によって区別され上下関係が決定されている。すなわち、プロトケラトプスが発見されれば、その地層はバヤンザク層と同じであり、タルボサウルスが発見されればその上位のネメグト層ということになる。

 20日の午前中にキャンプ地の付近や炎の崖で、地層の観察記載や化石の探査をした。下部の砂岩層には水辺の生物の巣穴と思われる砂管が密集しているようすが見られた。炎の崖の下では、昔の発掘隊の残していった空きビンや空き缶の山を発見した。彼らの活躍によって、すでにここでは化石が取りつくされてしまったのか、短い時間で恐竜の化石を発見することが私にはできなかった。

 炎の崖で化石を探していると、トゥンバイヤーが私に恐竜の絶滅の原因についてたずねてきた。私は、私の師である星野通平教授の説を紹介した。

 その説は、「恐竜は他の爬虫類同様に新生代に生き残った哺乳類や鳥類にくらべて循環器系が弱く、後期白亜紀にとくに活発になった火山活動の結果、空気中の二酸化炭素濃度が増加したために適応力が弱ってしまい絶滅した。」というものである。

 白亜紀後期から古第三紀にかけては、太平洋をとりまく地域に大規模な酸性火山活動があり、また大陸や海洋底でも大規模な玄武岩の火山活動が知られている。

 トゥンバイヤーは、ゴビ地域のジュラ紀以降の構造運動や火山活動を研究している立場から、恐竜の絶滅に関して火山活動の役割が大きかったと考えていた。そして、彼は私の答に対して、
「私も君の先生の意見に同意するよ。火山活動は、後期白亜紀の恐竜にとってとても悪い環境を与えたと、私も考えている。」
 と、言った。

 中生代後期から新しくはじまった上部マントルに起源をもつ玄武岩質マグマによる火山活動は、大気中の二酸化炭素濃度を上昇させ、それによる温室効果による地球の温暖化は恐竜を大発展させた。しかし、二酸化炭素濃度のさらなる上昇は、白亜紀の末期になって恐竜を絶滅させ、哺乳類や鳥類の発展をまねいたと、私は考えている。

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