泉のある村

 午前中のスケジュールを終えて、炎の崖をあとにする時、サンペルガバが、
「あなたと旅をするのも、あと五日になってしまった。」
 と、言った。

 私は、がく然とした。毎日の楽しい旅で私は今日が何日かまったく忘れていた。今日はたしかに20日である。もう、ゴビを去る日も近い。

 バヤンザクの南側の急な崖の中にある谷筋を車で登り、台地の上の平原に出た。少し行くと、女たちが草を摘んでいた。道を聞いて、南へ向かう。小さな村を左に見て、谷を下る。道があり、羊の群れがいる。車が通ると、道のまわりの羊が逃げまどう。金網に囲まれた畑があり、その近くのゲルで車は止まった。

 ここは草原の八百屋さんといったところだろうか。トマトやキュウリ、ジャガイモなどがゲルのまわりにしかれた青いシートの上に山積みされている。主人は恰幅のよい中小企業のおじさん風で、私が日本から来たと知ると歓迎してくれた。彼は、観光客の多い八月ならまだしも、9月のこんな時期になぜ日本人がここにいるのかが不思議でならなかったようである。

 耳の遠いおばあちゃんは、私をモンゴル人と間違えて何回も話しかけてくれた。トマトなどはウランバートルでは高くて手に入りにくいということで、トゥンバイヤーたちはここで大量に買い込んでいた。主人は我々に甘い瓜をサービスしてくれた。しかし、それは瓜の売りつけにほかならなかった。主人を気前のいいおやじと思い込んでいたトゥンバイヤーは、裏切られて余計な瓜まで買わされてしまった。商売人はこんな地球の辺境にあっても立派な商売人である。

 外にはトラックが2台来て、やはりトマトなどを買っていた。そのうち、1台のトラックはクランク始動で、ボンネットの前で2人の強力が交代でクランクを回していたが、エンジンはかからなかった。

 ここから西に進み、バルガー村に着いた。村の南側の崖にはバインシレ層の白い砂岩層の崖があり、その割れ目から泉が湧きだしていた。そのきれいな水は、小川となって麓の池に注いでいた。

 バインシレ層の砂岩層の砂は粗くて、その砂岩の間隙に水をもっていると言う。また同時にヘビも多いと言う。水のあるこのような風景は、ここがゴビとは思えないほどであった。

 風が強くなった。この村で買物をして、我々は北西へ30キロのところにあるツグリキンシレに向かった。

  1. ミンジン到達せず
  2. ラジオジャパン
  3. ズーンバヤンとバルンバヤン
  4. ソガラ氏
  5. ウラン山
  6. 病院のないゴビ
  7. 羊の解体
  8. 砂漠
  9. 大国の独善主義
  10. 炎の崖
  11. 恐竜の絶滅
  12. 泉のある村
  13. 恐竜化石の発見
  14. オーシ山

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