恐竜化石の発見

ツグリキンシレ  林原がプロトケラトプスの幼体の化石を大量に発見したツグリキンシレに着いたのは、午後2時すぎだった。天候は曇りで、強風である。「富豪の台地」という意味のツグリキンシレは曇天と強風で荒涼とした白い砂の崖に見えた。車の中でカップラーメンで昼食をとり、トゥンバイヤーからここに分布する地層に関する講義を聞いた。

 この白い崖は、おもに白い砂層からなり、長さ12キロにわたっている。この白い砂層の中には斜めに傾く褐色の砂層がレンズ状にはさまれている。ここからはプロトケラトプスやたまごの化石が発見されているが、とくに褐色の砂層からは完全な骨格化石が発見される場合が多いという。

 砂層には斜めに傾いた層が発達していて、生物の巣孔のような砂管も見られ、全体に河川の扇状地のような環境に堆積したと考えられているそうである。この地層はプロトケラトプスが発見されることからバヤンザク層に対比されているが、バヤンザクでは褐色の砂層だったのに対して、ここツグリキンシレは白色の砂層である。

傾斜する砂層  強風の中、崖を降りて地層の観察と化石の探査をする。砂が顔を打ち、砂ぼこりが目に入る。崖の上部には小石がつまった薄い礫岩層があり、その下には斜めに傾いて重なる白い砂層がある。この層の傾斜する角度は30度近くもあり、これは風成の砂丘(砂漠)の堆積物にも見える。砂層の崖の手前には風で堆積した現在の砂丘の砂があり、この砂の傾斜と崖に露出する地層の砂の傾斜がほぼ同じである。

 砂層の中に見られる砂管には、白くて細い砂管が直立しているものもある。これは、これまで見てきた底生生物の巣孔とは少し違い、植物の根の化石かもしれない。そうすると、この白い砂層には砂漠や砂丘で堆積したものもふくまれている可能性がある。

 褐色の砂層は硬く突き出して、表面がでこぼこしている。その上面を歩きながら化石を探すがなかなか見つからない。午後四時になり、あきらめて車にもどる。

 車の中でトゥンバイヤーと今後の予定を検討する。25日にウランバートルにもどるためには、ここにこれ以上留まるわけにはいかないことを理解する。しかし、GPSでもう一度位置を出してみた。

「どうもおかしい。」
 それによると、我々はツグリキンシレの東の端にいて、ツグリキンシレの崖の一部しか見ていない可能性があった。そこで、トゥンバイヤーにその事を話し、試みに台地を西に進んでもらった。そうしたら、そこには今までの何倍もの広さの崖が広がっていた。私は、彼に1時間だけ時間をもらい、強風の中、車を飛び出し、崖を降りて行った。

恐竜の化石  化石はやはり、褐色の砂層付近にあった。白い砂層の中に埋もれて、白い指の骨が3本見えていた。プロトケラトプスのような小型の恐竜のの足の先であろう。ちょうど、中足骨から指骨のところである。写真を撮り、慎重に取り上げる。トゥンバイヤーが来たので化石の発見を報告して、まわりを見まわす。すると、白い骨の破片がこの周囲に散乱していた。

 産状を記載し、化石の状態を観察した。骨は、周囲に発達した硬い砂管によって結びつけられていて、形をとどめていた。骨の化石がばらばらになって出てくることと、砂管が底生生物のものと似ていることなどから、この化石は水辺で砂とともに堆積したと思われた。

 風も強く、我々にはもう時間がなかった。この付近を探せばもっと化石が発見できたかもしれないし、化石の堆積した環境も詳しくわかったかもしれないが、私はひとつの化石を発見できたことで満足だった。

「もう十分だ。帰ろう。」
 と、私は彼に言った。

 崖を登り台地に出ると、林原のキャンプした跡に出た。燃やされたゴミや空き缶の山ができていた。林原のような大部隊ではゴミも空き缶も大量に出るだろうが、ゴビの人たちは外で火を燃やさない。乾燥しているゴビではそれが大災害をまねく危険性をもっていることを知っているからである。また、紙ゴミや空き缶、ビンは再利用する。これではゴビの人たちが再利用できないただのゴミの山である。

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