大 雪 

 今日はモンゴルを去る日である。お昼ごろの飛行機に乗るので、午前中の少し時間でおみやげを買ったり、地質調査所の坂巻さんを訪問する予定になっていた。

 朝食にロビーまで下りると、すでに三人がロビーにいて、
 「雪だ、雪だ、大雪だ。」
と、言ってはしゃいでいる。

 見ると外には雪が吹雪のように舞っていて、すでに道や地面がうすく雪に覆われていた。朝食をとり、荷物のパッキングを整えて、外に出た。自分の足跡を新雪につけて、滑らないように歩き、雪にけむる町の写真やビデオをとった。

 前回の旅では、9月24日の朝に雪の洗礼をうけて、早々にウランバートルに帰ってきたことを思い出す。今日の朝のこの雪景色は、2日前の地平線の蜃気楼を見たときには想像もできなかったことである。このことは、夏と冬が同居するモンゴルの9月の気候を象徴するもので、その変化がいかに急激かを物語っている。

 トゥメンバイヤーとオトゴンさんがホテルに来て、ホテルのチェックアウトをしてくれた。そして、私たちの荷物を車に積んで、トゥメンバイヤーの家に行った。荷物をそこに置いて、おみやげを買いにドルショップに行った。

 バヤンゴル・ホテルのドルショップにはいろいろなものが置いてあった。モンゴルの浮き彫り式の地形図やモンゴル音楽のコンパクトディスクなど、前年来たときよりもいろいろな品物がおいてあったが、セーターなどは前年よりも値段が上がっていた。おみやげの代表選手であるはずのアルヒが一本もなかった。

 アルヒがない理由は、8月に襲来した日本人観光客がすべて買いつくしてしまったということだった。アルヒは以前、日本に輸入されていたことがあったが、買う人も少なく、ビンの栓が不良だったために中身が蒸発するなどで返品があり、日本ではもう手に入らなかった。そのため、私はどうしてもアルヒを手にいれたくて、デパートや他のドルショップまで行ったが、目的をとげられなかった。
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