膨らむ地球
―その証拠・原因・影響―


星野通平
「膨らむ地球」刊行会 2001年
9月20日刊行
A5版 160ページ 〔会員頒布〕 1500円 (送料込み)

購読希望の方は、郵便振替 00850-8-28982 佐藤 武
宛てに1部1500円で、その希望部数分を連絡欄に書いて送金してください。



目 次
T海面上昇と地球の膨張
  矢部教授の発想/サンゴ礁と三角州/地中海の蒸発岩/海溝のサンゴ礁

U地球観のうつりかわり
  ちぢんでいく地球/ウェゲナーの大陸漂移説/大陸漂移説の二つの変形/大陸漂移は実在しなかった

V沈んだ陸橋
  海面上昇と陸橋の沈水/白亜紀の陸橋/始新世の陸橋/中新世の陸橋/鮮新世の陸橋

W山はなぜ高いか、海はなぜ深いか
  世界の屋根/日本の屋根/海溝は沈んでいない/西太平洋のなぞ

X地球の歴史
  地球の誕生/花崗岩時代/漸移時代/玄武岩時代

Y地球とは
  地球の一生/地質学の未来



cover of this book 私は、1998年末に、本書と同名の英文の専門書(The Expanding Earth 東海大学出版会)を出版した。本書はその後の知見を加えたこの本の普及書である。

 私は、学校を卒えて海上保安庁水路部に勤務し、10年ほどして東海大学海洋学部に籍をかえたが、その間を通じて、海面変化にともなう地質現象の探求をつづけ、今にいたっている。

 海面というものは、地球上の気候の変化、地球表層の変動の重要な指標でありながら、多くの地質家には、このことの重要性が理解されていない。私は、本書のなかで、海面変動を柱として、地球の発達のあらましを述べた。

 私が考えていることは、現在の地球科学界の流行学説(プレート説)とは、大きくちがっている。私は、地球上の地質現象を、おもに地球物理学的観測結果をもとにして解釈する、この流行説に賛成できない。地質現象の解釈は、地球を構成する岩石が語ることばを、根拠にすべきであると私は思っている。

 現在の地質学の混乱のもとは、いまもって、地球の誕生とその生いたちについて、定説がないことだろう。チャールズ・ダーウィンは、「種の起源」(1859年)によって、生物進化論をうち立て、生物学の基礎をきずいた。これを見ならいながら、地球とはこのようなものだろう、という私なりの習作が本書である。

 英語版が出版されたあと、内外の地質学雑誌に書評がのった。モスコー大学のミラノフスキー教授たちは、かなり詳しい内容の紹介をした後で、このような規模の半径増大で、「地球の膨張」という書名はふさわしくない、というクレームをつけた。これに対して、オーストラリアのD・R・チョイ博士は、「微小膨張地球」ということばで、プレート説に代わるものとして、本書を同国の地質学会誌に紹介してくれた。

 米国の地質学界は、政治や経済と同じように、日本の学界の手本である。カリフォルニア大学スクリップス海洋研究所の教授は、私の本をみて、米国で書評をたのもうとするなら、プレート説の本でなければだめだ、といってきた。

 ところが二年ほどたって、今年の夏のはじめ、米国石油地質家協会誌という、世界的に流布している学会誌の編集者から、拙著の書評のコピーが送られてきた。書評者は、米国ヒューストンのコンサルタントとあるから、石油探査の地質家だろう。かなり親切に内容を紹介してくれた最後に、面白いことを書いている。

 それぞれの主題を説明するのに、本書にはなんら突飛なことは書かれていない。このことは大変興味あることであり、重要なことである≠ニ。私はいつも思っている。新しい発見といったところで、それがなしとげられた後では、ほとんどが「コロンブスの卵」である、と。

 本書の原稿を仕上げて、さて出版社をどうしようかと思案していたとき、教え子の有志が、出版のことはまかせなさい、といってくれた。私は原稿を書いただけで、後の一切は教え子の諸君にまかせることにした。多くの教え子が協力してくれたことと思うが、舞台廻しは、清水在住の佐藤 武・花田正明・石田光男・柴 正博の諸君が担ってくれた。みんなに厚く感謝する次第である。

 生涯の師であった井尻正二さんは、病床から原著の出版を祝う便りをくれた。それが氏からの最後の手紙だった。感性の世界を導いてくれた吉田一穂さんの最後を見舞ったのは、三十年も昔のことになる。北国生まれの二人の導師を失った私は、いましばらくこの道の一人旅をつづけよう。

 2001年7月29日 
                星野 通平

    (本書の「まえがき」より)

2001/10/05

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